中国の長くて短い話(14)〜北京での再会〜
あれは去年の年末のこと。
北京からの帰り、
上海まで乗る予定だったフライトがキャンセルなった。
とてもよくあることなので誰もあわてていない。
航空会社カウンターで
新たに座席の予約の手配をお願いして、準備ができるまで
そこでボーっと呆けていたその時、
視界に、金髪で白人のおじさんの顔が入ってきた。
おじさんに見えたその人の顔は
みるみるうちに
私の目の中で青年の姿になっていった。
『この人...すごくよく知っている...けど、だれだか思い出せない』
私の小さめの海馬がどくどくと過去にさかのぼって
マッチするデータをさがしている。
『クラスメートだったロシア人のあの子だ』
20年ぶりに見るその子は
すっかり頭が薄くなっていたけど、
やっぱりちょっと痩せていて
どんなに太陽の下にいても日焼けのできない
真っ白な肌はかわらない、インテリなおじさんになっていた。
ぱりっとビジネスマンな服装。
シベリアン鉄道でも一緒だった、
マカオに密輸をしたときも
パスポートなしでタイに入国したときも一緒だった
仲良しだったクラスメート
なのに、私は声をかけることができなかった。
名前を思い出せなかったから?
名前を思い出せなかったからだけじゃなかった気もする。
ちみの名前はヤドバ...今思い出したよ