中国の長くて短い話(16)〜密輸ごっこ〜



f:id:dubian007:20110810141333g:image:w360

昆明へ行く前にマカオの隣の町珠海へ立ち寄る。

旅行資金を調達するために。



当時の留学生は、将来の外交を担うよう優秀な国費留学生も

どうでもいいようなちゃらちゃらした私のような留学生にも

一律1つの特権が与えられていた。


それは、生活家電一式を免税で中国内に持ち込めるというモノであった。

留学ビザを受け取るのと同時に、免税カードのような

モノが配布され、そこには洗濯機、TV、オーディオ、冷蔵庫、エアコン等

あらゆる家電をそれぞれ1つ持ち込んでもよいと書かれてあった。

どういう方針で、そういった特権をすべての留学生に与えていたのか

わからないけれど、

そんなものを国から搬入する留学生はどこにもいなかった。

いつからかその権利は夏休みのお小遣い稼ぎに変わっていた。




珠海のマカオへ入るボーダーの入り口には

ずらっと家電製品の小売店が立ち並んでいて

マカオから珠海へ運んできた外国製品の家電

を中国国内向けに販売している。

その家電たちは留学生があの特権を利用してマカオから

持ち込んだものだ。


たくさんある店舗の中から

よい値段で買ってくれるところと話をつけ

あとはお店の担当者の人にくっついていればいい。


1. パスポートと家電免税カードを担当者に渡す

2. トラックの荷台に乗る

3. 外から鍵がかかる

4. 乗ったトラックがどこかへ向かって走り出す

5. 荷台の戸が開いて、下に下りるように促される

6. きらきらしたネオンがまぶしくて目をあけれれない

7. きれいなスーツを着たポマードの広東人が差し出す書類にサインをする

8. トラックの荷台に乗る(山のような家電と一緒に)

9. 最初の店に戻る

10. 現金(当時の10万日本円くらい)をもらって終了




パスポートを見ず知らずの電気屋に渡すなんて

こんな危険を冒して10万円だなんて

若さはおそろしいと今は思う。

そうして私たちは昆明へ向かった。




外国人というだけでいろいろ優遇されているのも

その年が最後だったようだ。

振り返ってみると、ちょうど時代の狭間にいて

貴重な経験をしていたんだなぁと感慨深い。