マーキング
出所:手術前の説明書
『皮膚につけたマークは手術の時に切除する範囲を決定するとても大切なものです。
医師が医療用の特殊なインクで印をつけます。
特殊インクですが、消えてしまいますので、入浴時は石鹸であらったり、こすらないようにしてください。また2日に一回のペースで鏡を使って、正確に油性のマジックでなぞってください。薄くなった場合も同様に油性のマジックでなぞってください。大切なのは入院までにマークが消えないようにすることです。』
上記のマーキングは手術のおよそ1ヶ月前に行われる。
一ヶ月間、なぞり続けなければならない。
自分でなぞれない部分がある人はどうするんだろう。
癌治療は奥深い....。
今日、病院の廊下ですれ違った老人はマーキング中だった....。
点滴をやせ細った腕でささえながら歩いていた。
はだけたパジャマの中には
胸に大きく書かれた『井』の字が、
マジックで。
今度見かけたら声を掛けてみよう。
『おじいさん、線がダブってますよ』